「百年文書」劣化の波
修復や電子化急務
朝日新聞(2011/1/20)

劣化したマイクロフィルム

劣化したマイクロフィルム

 古い文書や画像を記録したマイクロフィルムの劣化が、各地で問題になっている。
酢のようなにおいを放ち、ワカメのようにゆがんでしまう「ビネガーシンドローム」。図書館などでは劣化を遅らせる工夫をしたり、新しいフィルムに複写したりするなど対応に追われている。

 京都市内の私立大学の図書館。資料室に入ると、鼻を突くような酸っぱいにおいが漂っていた。原因は、貴重な仏典などを撮影したマイクロフィルムだった。
10年ほど前、資料を閲覧した利用者の指摘で、異変に気づいた。フィルムが波を打ち、表面に白い粉が付いていた。まるで酢昆布のような状態で、機器で映し出すこともできなかった。
 この図書館では、2千本を超えるフィルムのうち、約半分がビネガーシンドロームになっている可能性があるという。
担当者は「将来、大切な文献だと判明するフィルムも含まれているはず」と考え、マイクロフィルム撮影業者に対応を尋ねた。
しかし、「修復は難しい」と言われた。大半のフィルムはそのまま残されている。

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京都市上京区の吉岡映像は、東京や北海道の企業と共同で劣化したマイクロフィルムの修復技術を開発し、特許を出願中だ。
大学などからの依頼で、すでに古文書や昭和初期の新聞を写したフィルムなど十数本を修復した。
 曲がったフィルムに熱を加えて平らにし、専用洗剤を使って表面の粉をガーゼなどでふき取る。その上で、改めてポリエステルのフィルムに複写する。同社代表の吉岡博行さんは「ひどく劣化したフィルムは修復不可能と放置されてきたが、救えるフィルムは多い」という。

 マイクロフィルムの劣化問題に詳しい東京大の小島浩之講師(歴史学・資料保存論)は「原本が失われたり、所在が分からなくなったりして、マイクロフィルムしか残っていないケースもある。史料が失われないうちに保存状態を確認し、早く対策をとる必要がある」と話している。

(写真・文章 朝日新聞 西山貴章)

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